正直、今年のさくらんぼ、ちょっとドキドキしながら育てています。
理由はシンプルで、去年(2025年)、山形県で21年ぶりに灰星病の注意報が出たから。
さくらんぼ農家にとって灰星病は最大の敵。
今年もまだ気を抜けないシーズンが続いています。
父と一緒に毎日畑を見回りながら、防除と経過観察を重ねているところです。
ところで皆さん、こんな悩み、ないですか?
- 庭のさくらんぼの実や葉に、見たことない変な斑点が出てきた
- ニュースで「21年ぶりの灰星病注意報」って聞いて急に心配になった
- 「農薬って何回も撒くって聞くけど、本当に必要なの?」と素朴に疑問
- 病気の名前で検索しても、海外サイトの翻訳記事ばかりでよく分からない
この記事では、山形県で2025年に21年ぶりに発令された灰星病注意報のこと、当農園が現実に対策しているさくらんぼの主な病気5つ、そして昨年の注意報の年に当園が被害ゼロで乗り切った理由まで、現役農家の一次情報でお伝えします。
読み終わる頃には、「なぜ農家がここまで防除をするのか」、その理由がちゃんと腑に落ちるはずです。
山形県寒河江市でりんごやさくらんぼ
などを育てるシャテヲマルグ農園です。
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21年ぶりの灰星病注意報|山形のさくらんぼ畑に何が起きているか
結論から書きます。
2025年、山形県は灰星病(はいぼしびょう)の注意報を21年ぶりに発令しました。
これ、地味なニュースに見えて、現役の果樹農家からすると相当な事件です。
なぜ21年ぶりが「ヤバい」のか
注意報というのは、要するに「今年はこの病気、いつもより危ない年だから気をつけて」という県からの警告。
21年ぶり、ということは、ほとんどの現役農家がリアルタイムで経験したことがないレベルの発生リスクという意味。
50年以上さくらんぼを作っている父も、最近の灰星病の発生状況には警戒を強めています。
当園は、注意報の年も「無事」でした
ここ、ちゃんと書いておきたいんです。
実は昨年(2025年)の注意報の年、当園のさくらんぼに灰星病の被害はほぼ出ませんでした。
父に改めて確認したところ、理由は明確で——「きちんと消毒をしていたから」。
これ、農家の世界ではよくある話ですが、防除を怠った畑とちゃんとやっていた畑では、注意報の年の結果が 天と地ほど違うことがあります。
21年ぶりの大発生という危険な年を、シーズンを通した処方箋通りの防除で 当園は乗り切れた——これは、薬剤散布の意味を考えるうえで、私自身にとっても大きな実体験でした。

灰星病ってどんな病気?
灰星病は、簡単に言うと実をぐずぐずに腐らせる、さくらんぼ農家にとって最も怖い病気のひとつです。
- 主に花や若い実から感染し、収穫期に近づくほど被害が拡大する
- 感染した実は茶色く変色し、表面に灰色のカビ状のものが出てきて、最終的に腐る
- 一度発生すると周りの実にも伝染しやすい
- 雨が多く湿度が高い年に大発生しやすい
「収穫間近の真っ赤な実が、雨のあと一気に腐っていく」——これが灰星病の怖さです。
当農園の5月下旬、念のため相談もしました
ここから、ちょっと正直な話を書きます。
5月の中旬、畑を見回っていて「実の発育にばらつきがあるかも?」と気になる瞬間がありました。
当園のさくらんぼ、今年は実の数自体は十分に付いている。
授粉もうまくいっている。
それでも「念のため」と思って、5月19日に西村山農業技術普及課(地域第一担当 電話 0237-86-8266)に電話で相談し、追加の質問を5月20日にメールで送付しました(回答は記事執筆時点で待ち中)。
その後、改めてじっくり畑を見回ったところ、心配したような病気の実は出ておらず、防除がきちんと効いていることを確認できました。
「もしかして…」と感じた一瞬の不安が、結果としては早めの再確認のきっかけになった——そんな小さなエピソードです。

さくらんぼで実際に起きる主な病気5つ|当農園の防除日誌から
「結局、さくらんぼってどんな病気と戦ってるの?」
当農園のリアルな散布日誌から、今シーズン(2026年)に薬剤散布の対象として名指しされた病気だけを抜き出して紹介します。机上の話ではなく、私の畑で現実に対策している病気です。
① 灰星病(はいぼしびょう)|最重要
- 症状:花・若い実から感染。実が茶色く変色し、灰色のカビが出て腐る
- 時期:開花期〜収穫期まで、長く警戒が必要
- 当農園での扱い:防除No.2・No.3・No.5・No.6・No.7 と、ほぼ全回で対象になっている最重要病害
② 炭そ病(たんそびょう)
- 症状:実に黒っぽいへこんだ斑点。進行すると腐敗
- 時期:開花前後から
- 当農園での扱い:防除No.3(フルーツセイバー)、防除No.6(キャプレート水和剤)で対策
③ 幼果菌核病(ようかきんかくびょう)
- 症状:若い実が変形・落下する
- 時期:開花直前〜幼果期
- 当農園での扱い:防除No.3・No.5 で対策。「実が小さいうちに守る」病気
④ 褐色せん孔病(かっしょくせんこうびょう)
- 症状:葉に小さな茶色い穴がたくさん開く(読んで字のごとく)
- 時期:開花期〜
- 当農園での扱い:防除No.3・No.5 で対策。葉の病気ですが、放置すると樹勢が落ちます
⑤ ハマキムシ・カメムシ等の害虫経由トラブル
- 厳密には病気ではないですが、害虫が傷をつけた実は、そこから病原菌が侵入しやすい
- 当農園では防除No.3・No.5・No.6・No.7 で殺虫剤も並行使用
当農園の2026年さくらんぼ防除実績|5回分を全公開
「現役農家って、実際どれくらい撒いてるの?」
ここ、他のさくらんぼブログでまず見られない一次情報なので、しっかり出します。
当農園の2026年さくらんぼ防除の散布記録です。
防除カレンダー(2026年シーズン)
| 回 | 散布日 | 時期 | 主な対象病害虫 | 主な薬剤 |
|---|---|---|---|---|
| 1回目 | 4/7 | ソメイヨシノ満開時 | カイガラムシ 灰星病 | トモノールS、ベンレート水和剤、アプロードフロアブル |
| 2回目 | 4/11 | 開花直前 | 灰星病・炭そ病・幼果菌核病・褐色せん孔病、ハマキムシ | フルーツセイバー、フェニックスフロアブル |
| 3回目 | 4/24 | 満開3日後 | 灰星病・幼果菌核病・褐色せん孔病、ハマキムシ、コアオカスミカメ | ファンタジスタ顆粒水和剤、サムコルフロアブル10、ウララDF |
| 4回目 | 5/3 | 満開15日後 | 灰星病、炭そ病、オウトウハマダラミバエ、カメムシ類 | スミレックス水和剤、キャプレート水和剤、アグロスリン水和剤 |
| 5回目 | 5/15 | ビニール被覆前 | 灰星病、カメムシ・ショウジョウバエ、ハダニ | スコア顆粒水和剤、アルバリン顆粒水溶剤、ダニオーテフロアブル |
※ 上記は当農園の処方箋(イノチオプラントケア株式会社 山形営業所発行)に基づく実散布記録です。
散布液量はさくらんぼで1回あたり800L(防除No.6は実散布で600L)。
改めて見ると、灰星病の名前ばかり
並べてみて気づくと思います。
ほぼ全回で「灰星病」の文字が出てくるんです。
これが現実。21年ぶりの注意報が出る前から、さくらんぼ農家は灰星病を最大の敵として、毎年シーズン通して守り続けている——そういう病気なんです。
そして繰り返しになりますが、昨年の21年ぶり注意報の年も、当園はこのカレンダー通りに動いて被害ゼロで乗り切りました。
「防除をする意味」が一番ハッキリ出たシーズンだったと思います。

「農薬って怖くないですか?」|農家からの正直な返事
ここ、いつも消費者の方から聞かれる話なので、誠実に書きます。
「5回も6回も農薬撒いて、大丈夫なんですか?」
結論:撒かないと、ほぼ全滅する年がある
正直、私も農家を継ぐ前は「無農薬っていいよな」と思っていました。
でも、現場に入って分かったのは、特に灰星病みたいに「実そのものを腐らせる病気」は、防除を怠ると本当に全滅するということ。
その証拠が、まさに 昨年の21年ぶり注意報の年です。
当園はきちんと処方箋通りに防除をしていたおかげで、被害はほぼ出ませんでした。
一方で、防除を怠れば被害が一気に拡大したであろう、そういう年でした。
自然の方が、こちらの都合に合わせてはくれないんです。
でも、撒けばいいわけでもない
ここも本音です。
散布した分だけコストもかかるし、農家自身も浴びたくない。
だから当農園は、
- 処方箋に基づいて回数と希釈倍数を守る
- 天候と病害虫の発生状況を見て、必要なときに必要な分だけ
- 収穫前の使用禁止期間(PHI)を厳守
このルールで運用しています。
処方箋は、農家が勝手に決めているわけではありません。
県・農薬メーカー・JA・農薬販売店の知見を集約した「最低限のセーフティネット」として作られたものです。
「皆さんの食卓に届くまで」の話
収穫期に入ってからは、原則として殺菌剤の散布はもうしません。
収穫前の決められた日数は薬剤散布を行わない——これは法的にも決まっているルール(PHI=収穫前日数)です。
なので、皆さんが食べる頃には、その規定をクリアした状態でお手元に届いています。
それでも不安な方は、サッと水で洗ってから食べていただければ、それで十分だと当園は考えています。
家庭・趣味でさくらんぼを育てている人へ|まず何をすればいいか
ここからは、庭にさくらんぼがある皆さんへ。
「うちのさくらんぼ、葉に穴が…」「実がポツポツ茶色く…」——そう思って検索してきた方もいるはずです。
まず最優先:地元の専門家に相談を
これ、すごく大事なので最初に書きます。
自己判断で農薬を買って撒くのは、おすすめしません。理由はシンプルで、
- 病気の特定は、写真や文章では正確にできない
- 同じ症状でも原因が違うことが普通にある
- 撒くタイミングや希釈倍数を間違えると、樹そのものを傷める
なので、まずは下記のような窓口に相談してみてください。
多くは無料で対応してくれます。
- お住まいの地域の農業改良普及センター(県の組織)
- JAの営農指導員
- お近くの園芸店(信頼できるお店)
山形県寒河江市近辺の方であれば、当園もお世話になっている 西村山農業技術普及課が窓口です。
趣味家庭栽培で、最低限できる予防
専門家に診てもらう前提で、家庭の樹を守るためにできる最低限のことをいくつか挙げておきます。
- 落ち葉・落ちた実をきちんと拾って処分する(病原菌の越冬場所になる)
- 風通しを良くする剪定(灰星病は湿気で広がる)
- 雨よけがあれば被覆を検討(プロもビニール被覆します)
- 明らかに病気が出ている実は早めに摘んで処分(拡大を防ぐ)
完全な無農薬を目指すなら、この「予防」をどれだけ徹底できるかが勝負になります。
プロは予防の上に薬剤散布で守りを足している、という構造です。

「腐ってしまった実」の処分について
これも一応。
腐った実を畑や庭にそのまま放置するのは、いちばんやってはいけないことです。
翌年の感染源になります。土に埋めるか、ゴミとして処分してください。
今シーズンの当園の状況|2026年5月末時点の経過観察
冒頭で書いた、5月の畑見回りでの「念のための相談」のその後を、簡単に残しておきます。
現時点(2026年5月末)で分かっていること
- 実の状況:実は順調についており、病気の発生は確認できていない
- 今年これまでの防除:処方箋通りに No.2〜No.7 を実施済み(散布日誌は本文参照)
- 行動記録:5/19 電話相談、5/20 メールで追加質問送付(回答待ち)
- 背景:昨年の21年ぶり注意報の年も、当園は同じ防除体系で乗り切った
なぜここまで詳細に書くのか
ちょっと迷ったんです。
「病気のリスクの話を書いておいて、結局『うちは大丈夫でした』って肩透かしじゃないか」とも考えました。
でも、皆さんがネットで「さくらんぼ 病気」と検索した時に、“ちゃんと防除している畑では、こうやって守れている”という現役農家のリアルがあった方が、絶対に役に立つはずです。
「怖い病気はある。でも、毎年シーズン通してケアしている農家がたくさんいる」——その事実をここに残しておきたいと思います。
仮に今後何かしら症状が出てきたら、その時点で追記・続報します。
まとめ|さくらんぼの病気との付き合い方
長くなったので、要点を振り返ります。
- 2025年、山形県は21年ぶりに灰星病注意報を発令。さくらんぼ農家は今も警戒継続中
- 当園は、その注意報の年も、処方箋通りの防除で被害ゼロで乗り切った(父談)
- 当農園が現実に対策している主な病気は、灰星病・炭そ病・幼果菌核病・褐色せん孔病の4つ+害虫経由トラブル
- 2026年シーズン、当園は5回(記事掲載分)の防除を処方箋通りに実施。ほぼ全回で灰星病が対象
- 農薬は「ただ撒けばいい」ものではなく、処方箋・希釈倍数・収穫前日数(PHI)を守って初めて意味がある
- 家庭栽培の方は、自己判断で薬を撒く前に、地元の普及センターやJAに相談を
- 当園は2026年シーズンも、処方箋通りの防除で病気の発生は確認されず順調。5/20に念のため普及指導員へメール質問を送付・回答待ち。今後変化があれば続報します
さくらんぼという果物は、思っているよりずっと、病気との戦いの上に成り立っている作物です。
皆さんが食べる赤い一粒の裏には、農家のこういう毎日があります。
旬になったら、ぜひそんなことも頭の片隅に置きながら、皆さんの口に運んでいただけたら嬉しいです。
ちなみに当園のさくらんぼ、無事に収穫期を迎えられたら6月中旬からBASEショップで発送を始める予定です。
今シーズンの様子は、続報としてブログかX(旧Twitter)でもお知らせしますので、フォローしてもらえると嬉しいです。
ちなみに、今シーズンのさくらんぼ、4月下旬に花が咲いた頃の記事も書いています。あの花が、今こうして実になっているのか——と、季節の流れを感じてもらえると嬉しいです。

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