正直、農家になって一番びっくりしたのがこれでした。
田植えって田んぼに水を張ってササっと植えて終わり、くらいに思ってたんです。
実際にはその前に、めちゃくちゃ重労働の準備があるって。
誰も教えてくれなかった話。
ところで皆さん、こんなこと考えたことないですか?
- 田植えって、そもそもどうやって始まるんだろう
- 田んぼの水って、どこから来てるんだろう
- 用水路って、誰が掃除してるんだろう
- 農家って、田んぼの中の作業しかしないんでしょ?
実はこれ、全部「堰払い(せきばらい)」という作業に繋がっていきます。
今日はその朝6時の話。
山形県寒河江市でりんごやさくらんぼやお米
などを育てるシャテヲマルグ農園です。
50年以上受け継がれてきた農家直伝の豆知識や、
プロしか知らない旬の楽しみ方をブログで発信中。
SNSでも日々の農業のリアルを発信しています。
「堰払い」って、そもそも何ですか?
ざっくり言うと、田んぼに水を引いてくる用水路(堰)の泥を、人力で掻き出す作業です。
冬の間に堰の中には落ち葉・土砂・草が溜まりまくっています。
このまま水を流したらどうなるか。
詰まります。
詰まると、田んぼの奥まで水が届きません。
届かないと、田植えできません。
つまり、堰払いをやらないと米作りそのものが始まらない。
それくらい大事な作業なんですよ。

写真、見えますか?両側がコンクリートの三面張りになってて、底に泥がびっしり溜まってます。
これを全部スコップで掻き出していきます。
なぜ田植え前にやらなきゃいけないのか
タイミングが本当にシビアです。
山形は田植えが5月中旬から始まります。逆算すると、堰払いは5月の頭に終わらせておかないと間に合わない。
だから連休のど真ん中に総出でやる、というのが寒河江の春の風物詩になっています。
これ、一軒の農家で勝手にやれることじゃないんです。
用水路は集落全体で共有しているものなので、関係する田んぼの持ち主が集まって自分達の手で維持する。
「水利組合」って聞いたことありますか?これがその仕組みの正体です。
朝6時、堰の中に入ってみました
今朝、田んぼの持ち主6人で1kmぶんの堰を担当しました。
正直、ナメてました。
スコップ1本で、堰の中に入って泥を掻き上げて外に放り出す。
これをひたすら繰り返すだけ。…なんですが。
特にキツかったのが、泥が分厚く堆積している200mくらいの区間。
普通の場所は数cmなんですが、ここは10cm以上溜まってて、スコップで持ち上げる泥の重さが段違いでした。
声が、自然と漏れます。
「うっ」とか「ふぁー」とか。
前で作業してる人からも同じ声が聞こえてきて、ちょっと笑いそうになりました。
みんな、同じところで唸ってるんです。

腰にきます、マジで。
でも不思議なもので、終わった後の達成感はガラッと違うんですよね。
「俺、農家の仲間入りしたかも」って一瞬思いました。
泥の中から、まさかのアレが出てきた話
掻き出してる途中で、ふと気づくんです。
「これ、泥だけじゃないな」って。

写真、分かりますか?泥の山の中に、ずいぶん古いペットボトルが混じってます。
自分でスコップで掻き出して、これが出てきた瞬間「うわ」となりました。
たぶん、ずっと前に誰かが捨てたものが、長い年月の間に堰の中で泥と一緒に堆積してたんですよね。
これ、地味に大事なポイントなんです。
用水路って、地域全体の生活と直結しているということ。
農家だけのものじゃない。
だから集落全体で守っていく。
掻き出した泥の中から出てくるのは、地域の歴史そのものだったりします。
堰払いは「米作りの本当のスタート」だった
これでようやく、田んぼに水を入れる準備が整いました。
この後の流れは、こうなります。
1. 堰に水を流す
2. 田んぼに水が入る
3. 代かき(土と水をかき混ぜる作業)
4. 田植え
つまり堰払いは、米作りという長い長いリレーの第1走者なんですよ。
田植えとか稲刈りみたいに目立つ作業じゃないけど、これがないと全部始まらない。
田んぼで黄金色に揺れる稲穂を見たとき、その始まりは集落の6人が朝6時に泥まみれになって掻き出した1kmの堰だった、ということ。
そう思って秋のお米を食べると、ちょっと味が違って感じるはずです。
そうやって育てたお米、シャテヲマルグ農園のBASEショップでも販売しています。
家族と集落で、こうやって一年かけて育てたお米です。
よかったら、11月の新米シーズンに覗いてみてください。

コメント