田植えの前に、泥まみれの朝6時。「堰払い」って、知ってる人少ないと思うんですよ

正直、農家になって一番びっくりしたのがこれでした。

田植えって田んぼに水を張ってササっと植えて終わり、くらいに思ってたんです。

実際にはその前に、めちゃくちゃ重労働の準備があるって。

誰も教えてくれなかった話。

ところで皆さん、こんなこと考えたことないですか?

  • 田植えって、そもそもどうやって始まるんだろう
  • 田んぼの水って、どこから来てるんだろう
  • 用水路って、誰が掃除してるんだろう
  • 農家って、田んぼの中の作業しかしないんでしょ?

実はこれ、全部「堰払い(せきばらい)」という作業に繋がっていきます。

今日はその朝6時の話。


山形県寒河江市でりんごやさくらんぼやお米

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目次

「堰払い」って、そもそも何ですか?

ざっくり言うと、田んぼに水を引いてくる用水路(堰)の泥を、人力で掻き出す作業です。

冬の間に堰の中には落ち葉・土砂・草が溜まりまくっています。

このまま水を流したらどうなるか。

詰まります。

詰まると、田んぼの奥まで水が届きません。

届かないと、田植えできません。

つまり、堰払いをやらないと米作りそのものが始まらない。

それくらい大事な作業なんですよ。

堰の中はこんな感じ。泥と雑草が冬の間に溜まりまくっている

写真、見えますか?両側がコンクリートの三面張りになってて、底に泥がびっしり溜まってます。

これを全部スコップで掻き出していきます。

なぜ田植え前にやらなきゃいけないのか

タイミングが本当にシビアです。

山形は田植えが5月中旬から始まります。逆算すると、堰払いは5月の頭に終わらせておかないと間に合わない。

だから連休のど真ん中に総出でやる、というのが寒河江の春の風物詩になっています。

これ、一軒の農家で勝手にやれることじゃないんです。

用水路は集落全体で共有しているものなので、関係する田んぼの持ち主が集まって自分達の手で維持する。

「水利組合」って聞いたことありますか?これがその仕組みの正体です。

朝6時、堰の中に入ってみました

今朝、田んぼの持ち主6人で1kmぶんの堰を担当しました。

正直、ナメてました。

スコップ1本で、堰の中に入って泥を掻き上げて外に放り出す。

これをひたすら繰り返すだけ。…なんですが。

特にキツかったのが、泥が分厚く堆積している200mくらいの区間。

普通の場所は数cmなんですが、ここは10cm以上溜まってて、スコップで持ち上げる泥の重さが段違いでした。

声が、自然と漏れます。

「うっ」とか「ふぁー」とか。

前で作業してる人からも同じ声が聞こえてきて、ちょっと笑いそうになりました。

みんな、同じところで唸ってるんです。

スコップを振り上げる瞬間。腰にきます、マジで

腰にきます、マジで。

でも不思議なもので、終わった後の達成感はガラッと違うんですよね。

「俺、農家の仲間入りしたかも」って一瞬思いました。

泥の中から、まさかのアレが出てきた話

掻き出してる途中で、ふと気づくんです。

「これ、泥だけじゃないな」って。

泥の中から出てきた、年代物のペットボトル

写真、分かりますか?泥の山の中に、ずいぶん古いペットボトルが混じってます。

自分でスコップで掻き出して、これが出てきた瞬間「うわ」となりました。

たぶん、ずっと前に誰かが捨てたものが、長い年月の間に堰の中で泥と一緒に堆積してたんですよね。

これ、地味に大事なポイントなんです。

用水路って、地域全体の生活と直結しているということ。

農家だけのものじゃない。

だから集落全体で守っていく。

掻き出した泥の中から出てくるのは、地域の歴史そのものだったりします。

堰払いは「米作りの本当のスタート」だった

これでようやく、田んぼに水を入れる準備が整いました。

この後の流れは、こうなります。

1. 堰に水を流す

2. 田んぼに水が入る

3. 代かき(土と水をかき混ぜる作業)

4. 田植え

つまり堰払いは、米作りという長い長いリレーの第1走者なんですよ。

田植えとか稲刈りみたいに目立つ作業じゃないけど、これがないと全部始まらない。

田んぼで黄金色に揺れる稲穂を見たとき、その始まりは集落の6人が朝6時に泥まみれになって掻き出した1kmの堰だった、ということ。

そう思って秋のお米を食べると、ちょっと味が違って感じるはずです。


そうやって育てたお米、シャテヲマルグ農園のBASEショップでも販売しています。

家族と集落で、こうやって一年かけて育てたお米です。

よかったら、11月の新米シーズンに覗いてみてください。

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この記事を書いた人

山形県寒河江市で、果樹と米を育てています。祖父の代から続く農業経営50年。さくらんぼ・りんご・プルーン、そしてお米。一つひとつを家族の手で大切に。山形・寒河江からお届けします。

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