さくらんぼの収量の差はどこから|義父の畑と数字を並べて分かったこと

お盆に、妻の実家へ行ってきました。

義父は専業で農家をしている、この道数十年のプロです。

これまで農業の話を、正面からしたことはありませんでした。

対等に話せるほど、私には農業の知識がなかったので何を話せばいいのか分からず。

でも今年は、聞きたいことが山ほどありました。

この半年、YouTubeを見て、講習会に出て、本を読んで、数字をつけてきた。

それが本当に正しい方向なのか、確かめたかったんです。

結論から言うと——方向は合っていました。

そして同時に、うちに足りないものが、数字ではっきり見えました。


山形県寒河江市でりんごやさくらんぼ
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本で読んだ技術が、目の前でつながった

今、りんごの木を植え替える準備をしています。

古い木を抜いて、若い木に更新する「改植」という作業です。

そこで義父に教わったのが、枝の仕立て方でした。

若い木の枝を、ひねって、下に倒す。

理由を聞いて、なるほどと思いました。

りんごの枝は、上に向かって伸びている間は実をつけません。

木が「まだ成長する時期だ」と判断しているうちは、実をつける余裕がない。

だから枝を横に倒してやる。

すると木が「もう伸びなくていいんだな」と受け取って、実をつける方に切り替わる。

理屈は、実は知っていました。

『ノウカノタネ』という農業系のYouTubeチャンネルで見ていたんです。

(農家の方が本音で技術を語ってくれるチャンネルで、本当に勉強になります)

でも、知っているのとできるのは違いました。

義父が実際に手入れした木を見せてもらって、初めて「ああ、こういうことか」と腑に落ちたんです。

どのくらいひねるのか。

どの枝を選ぶのか。

動画では分からなかったことが、目の前にありました。

知識は、現場と合わせて初めて技術になる。

当たり前のことですが、身をもって分かりました。

ベテランほど「勘」に頼っている、と思っていました

農業をやっていない頃、私はこう思っていました。

ベテラン農家は長年の勘で作っているんだろう、と。

義父の話を聞いて、まったく逆だと分かりました。

義父は、土壌診断を作物を作る前に受けています。

自分の畑の土に何が足りないのかを、数字で把握している。

そして分からないことがあれば、農業技術普及課に自分から電話して聞く。

教わったことを自分の畑で試して、結果を見てまた次の年に活かす。

これ、実験と検証そのものです。

私もこの半年、同じことをやってきました。

畑ごとに記録をつけて、収穫量を測って、普及課に相談に行って。

「素人が理屈っぽいことをやっているだけかな」と思う時もありました。

でも、何十年もやっている人が同じアプローチを取っていた。

やり方は間違っていなかった。

これが今回、一番安心できたことでした。

数字を並べたら、はっきり差がありました

そして、これです。

さくらんぼの出荷量を聞いて、うちの数字と並べてみました。

面積出荷量10aあたり
義父の園地13a700kg538kg
うちの園地16a575kg359kg

面積はうちの方が3割広いのに、出荷量は届いていません。

同じ面積に直すと、義父はうちの1.5倍。

しかも、この差は「選果で落ちた分」ではありませんでした。

うちの歩留(収穫したうち、商品になった割合)は67.7%。

義父もだいたい7割でした。

ほぼ同じなんです。

つまり差は、選果の腕でも、傷んだ実の多さでもない。

木からとれる量そのものが、1.5倍違う。

言っておきたいのは、これは勝ち負けの話ではないということです。

義父と競おうなんて、これっぽっちも思っていません。

数字を見て最初に出てきたのは、「義父はさすがだな」でした。

差がついた本当の理由は、たぶん「更新」

じゃあ、この1.5倍はどこから来たのか。

木の素質でも、土の良し悪しでもないと思っています。

その時代その時代に合わせて、経営を更新してきたかどうか。

そこじゃないかと。

義父は土壌診断を受けて、普及課に聞いて、新しい品種や仕立て方を取り入れて少しずつやり方を変えてきました。

うちは、違いました。

祖父から父へ、父から私へ。

守ることは、ずっとやってきたんです。

でも、時代に合わせて変えるということを、してこなかった。

これは父を責める話ではありません。

守り抜くというのは、それだけで大変なことです。

作れなくなった畑が周りにいくつもある中で、うちの畑は今も生きている。

それは父がやったことです。

しかし、守るだけでは足りなかった。

その結果が、この1.5倍なんだと思っています。

もうひとつ、物差しが手に入りました

先日、農業技術普及課で経営相談を受けたときに、県が作っている資料をもらいました。

「主要作目別経営指標」といって、品目ごとに10aあたりどれくらい穫れて、いくらになるかの目安が載っています。

さくらんぼ(佐藤錦)の指標は、10aあたり600kg。

並べてみると、こうなりました。

10aあたり出荷量県の指標に対して
県の指標600kg100%
義父の園地538kg90%
うちの園地359kg60%

義父は、県の目安の9割まで出しています。

うちは6割。

この表を見たとき、正直ちょっと怖くなりました。

でも同時に、すごく大事なことが分かったんです。

県の指標って、パンフレットに載っている理想の数字だと思っていました。

「そんなの、条件のいい人の話でしょう」と。

でも義父は、同じくらいの面積で、9割を出している。

つまりこの数字は、絵に描いた餅じゃない。

手が届くところにある数字だった。

「土が違うから」で終わらせない

こういうとき、逃げ道はいくらでもあります。

土が違う。

日当たりが違う。

木の年齢が違う。

どれも本当かもしれません。

でも、そこで納得してしまったら、来年も同じ数字です。

だから、次の一手は決めました。

りんごの木を植え替えます。

ふじ、ぐんま名月、高徳。

品種を分けたのは、収穫時期をずらして作業を分散させたいのと、ふじ一本に頼る経営から抜け出したいからです。

さくらんぼの方は、まず木の本数を聞くところからです。

うちは16aに29本。

義父の畑と比較して、もし本数が違うならそれだけで差の理由が見えてきます。

同じなら、原因は育て方の中にある。

どちらにしても、次にやることが決まります。

この半年で、いちばん変わったこと

YouTube、講習会、本、実践、そして数字をつけること。

半年前の自分と比べて、何が変わったかというと、分からないことが分かるようになったことだと思います。

以前は「なんとなく今年は良かった」「今年はダメだった」で終わっていました。

今は「10aあたり359kg。県の目安の6割。歩留は67.7%」と言える。

言えるようになると、次に何を調べればいいかが見えてきます。

そして、身近に何十年もやってきた人がいる。

聞けば教えてくれる人がいる。

これは本当にありがたいことだと、今回あらためて思いました。

差がある数字を見るのは、正直こたえます。

でも、足りないものが分かったのは前進です。

うちは長いこと、守ることに全力を使ってきました。

これからは、変えていく番なんだと思います。

来年は、少しでも動いた数字を持って、義父に報告したい。

そう思っています。


うちのさくらんぼやりんごは、こうやって毎年ああでもないこうでもないと言いながら作っています。

もしよかったら、オンラインショップものぞいてみてください。

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この記事を書いた人

山形県寒河江市で、果樹と米を育てています。祖父の代から続く農業経営50年。さくらんぼ・りんご・プルーン、そしてお米。一つひとつを家族の手で大切に。山形・寒河江からお届けします。

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